首都圏を中心にステーキ店をチェーン展開する「サン・チャレンジ」(東京都渋谷区)の店長だった男性=当時(24)=が自殺したのは過酷な長時間労働と上司によるパワーハラスメントが原因だったとして、両親が会社側に計約7300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が4日、東京地裁であった。山田明裁判長は「恒常的な長時間労働や暴言、暴行などのパワハラ以外に自殺を引き起こす要因は認められない」として、計約5790万円の支払いを命じた

山田裁判長はさらに、「自殺した本人に過失はなかった」と指摘し、過失相殺による賠償額の減額を認めなかった。原告側代理人は「自殺をめぐる訴訟で過失相殺を認めないのは異例」としている。

判決では「遅くとも平成20年2月ごろから恒常的に長時間労働を行い、(上司にあたる)エリアマネジャーから暴行などのパワハラを受け、心理的負荷により精神障害を発症させた」と認定。会社側についても「業績向上を目指す余り、社員の長時間労働や上司によるパワハラなどを防止する適切な労務管理体制を執ってこなかった」と責任を認めた。

判決によると、男性は19年に入社、21年に同社が経営する「ステーキのくいしんぼ」の都内店舗の店長になった。男性は22年11月、首をつって自殺。渋谷労働基準監督署が24年に自殺を労災認定している。

「ひどすぎる労働環境」
「ばかだな」「使えねえ」。24歳で自ら命を絶った男性は、上司による職場での暴言に加え、しゃもじで殴られるなどの暴行も受けていた。また、自殺直近の半年間での休日はわずか2日だけ
いじめは時間外にも及んだ。貴重な休日には上司から、「ソースを買ってこい」などと命じられることもしばしばあった。裁判所も判決で「日常的使い走り」と指摘している。さらに、仕事後には渋る本人を釣りやカラオケに付き合わせるなど、上司は日常的に負荷をかけ続けた。こうした悪質性が、過失相殺の判断に影響を与えたとみられる。
裁判所は、度を越した労働環境が、男性を追い込んだと認定した。