これまでの最高裁判例は、「預貯金は遺産分割の対象外だ」としていて、その結果、預貯金を相続した人は、「法律が定める相続分をそれぞれ自由に金融機関から引き出せる」とされていた(金融機関は、相続人全員の同意「遺産分割協議書」が無いと、相続人単独では個別持ち分の解約は受け付けない)。
通常遺産分割は、話し合いや「家事調停」では預貯金その他を含めて取り分を決めることが多い。しかし調停が不調の場合、審判では原則預貯金とその他の遺産は区別して分配される。
今回の裁判は、預貯金を中心に約4000万円の遺産を残して亡くなった女性の相続人2人が、話し合いでは決着がつかず、裁判所で遺産の分け方を争っているもの。相続人の1人は「相手方は多額の生前贈与を受けていて、本来なら取り分がゼロとなるはずだ(特別受益)。預貯金が遺産分割の対象にならない結果、相手方が半額を引き出せるようになってしまうのは不公平だ」と主張している。
最高裁は今年3月大法廷に回付した。「弁論」が開かれたことで、預貯金を遺産分割の対象とする方向で判例が変更される見通しで、年内にも最高裁の判断が示される。