【中日新聞】【夕刊】

認知症や知的障害、精神障害などで判断能力が不十分な人を支援する「成年後見制度」の利用を促進する法律が8日の衆院本会議で自民、民進、公明各党などの賛成多数で可決成立した。認知症高齢者らの増加に対応し、担い手確保のため市民の後見人を育成するほか、選任する家庭裁判所の監督体制を強化する

医療や介護に関する後見人の権限拡大も検討する。併せて審議されていた、郵便物の開封や、後見されている人が死亡した後の手続き代行を認める民法の一部改正などは、6日の参院本会議で既に成立している。

認知症高齢者らは財産管理や介護施設の入所契約を結ぶのが難しかったり、悪徳商法の被害に遭いやすかったりする。後見人はこうした人たちの手続きを代行するが、認知症の人が400万人を超えるのに、利用は約18万人にとどまっていた。

また意思決定が困難になった人も医療や介護を円滑に受けられるようにするために、現在は財産管理と介護サービス契約の代行などに限られる後見人の業務拡大を検討することも求めた。手術や輸血といった医療行為への「同意権」などが焦点になるとみられるが、後見される人や家族、支援団体からは「自己決定権が侵害される恐れがある」との批判も出ている。

成年後見制度 :2000年に、禁治産、準禁治産制度を廃止してスタートした。
家族らの申し立てを受けて家庭裁判所が選任する「法定後見」と、将来に備え、判断能力があるうちに自分で選ぶ「任意後見」がある。

親族後見人の問題点
当初、後見人は家族がなることが多かったが、将来の相続人となる家族と後見される親(祖父母)は利害関係では対立関係にある(本人のために多額の治療費を使うと相続財産が減る)他、親族後見人の横領等の問題があった。家庭裁判所が選任する「法定後見人」の親族の割合は4割以下となっている。

弁護士、司法書士、行政書士等の「専門職後見人」などが多いが、研修を受けた市民(法人)もなれる。法律行為(財産管理など)が主な業務で、日常の買い物や掃除などは業務に含まれない。